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世田谷区の店舗を居抜きで売却する方法|造作譲渡・物件売却の流れと注意点

query_builder 2026/10/23
コラム
世田谷区の店舗を居抜きで売却する方法

はじめに:「居抜き売却」という言葉には、2つの意味がある

 

「閉店することにしたが、内装や厨房機器を処分するのにお金がかかりそうだ」 「店舗兼住宅を相続したが、店の設備がそのまま残っている」 「世田谷区で長年続けてきたお店を、次の人に引き継ぎたい」 「居抜きで売れると聞いたが、何から始めればよいのか分からない」

店舗の閉店や売却を考えるとき、「居抜き」という選択肢が浮かぶ方は多いと思います。居抜きとは、内装・厨房設備・什器などを、そのままの状態で、次の人に引き継ぐ方法です。うまく進めれば、設備を現金化でき、撤去や原状回復の費用も抑えられる可能性があります。

ただし、「居抜きで売却する」といっても、立場によって、手続きの中身がまったく異なります。この点を、最初に整理しておく必要があります。

あなたの立場 売却・譲渡の対象 主な契約・手続き 関わる相手
A.店舗を借りて営業している(テナント) 内装・設備・什器などの「造作」と、場合によっては営業の引継ぎ 造作譲渡契約。貸主の承諾が必要になるのが一般的 貸主(オーナー)、次のテナント、リース会社、仲介会社
B.店舗の建物・土地を所有している(オーナー) 店舗付きの不動産(土地・建物)そのもの。設備が残っていれば、設備ごと 不動産売買契約。設備の扱いは、売買契約の中で取り決める 買主、賃借人(入居中の場合)、金融機関、不動産会社
C.店舗兼住宅を所有し、1階で営業している 建物全体(住居部分と店舗部分) 不動産売買契約。税金の扱いが、居住用と事業用で分かれる 買主、金融機関、税理士、不動産会社

この記事では、A(テナントの造作譲渡)と、B・C(オーナーの店舗物件の売却)の両方について、世田谷区で店舗を扱う場合の基本的な考え方、進め方、注意点を解説します。ご自身がどの立場に当てはまるのかを確認しながら、お読みください。

なお、この記事は2026年10月時点の情報をもとにした一般的な解説です。契約内容や物件の状況によって、取るべき対応は異なります。実際の手続きにあたっては、弁護士、税理士、行政書士などの専門家にもご確認ください。

 

この記事でわかること

・居抜き売却の意味と、テナントとオーナーで異なる点
・居抜きのメリットと、向いている店舗・向いていない店舗
・テナントが造作譲渡をするときの流れと、貸主の承諾の考え方
・造作譲渡料の決まり方と、査定の考え方
・リース品、原状回復、営業許可など、見落としやすい注意点
・オーナーが店舗付き物件を売却するときの方法
・居抜きで売る方法と、更地・スケルトンにして売る方法の比較
・売却にかかる税金の基礎知識
・世田谷区で店舗を売却するときの、エリア別の考え方
・トラブルを避けるためのチェックリスト

 

第1章 居抜きとは何か:スケルトンとの違い

 

1-1 居抜きとスケルトン

居抜きは、前の借主(または所有者)が使っていた内装、厨房設備、空調、什器などが残った状態のことです。これに対し、スケルトンは、内装や設備をすべて撤去し、建物の骨組み(躯体)だけの状態にしたものを指します。

  居抜き スケルトン
状態 内装・設備が残っている 内装・設備がすべて撤去されている
次の入居者の初期費用 内装工事費を抑えやすい 内装工事の費用が、ほぼ全額かかる
開業までの期間 短くしやすい 工事期間が必要
売る側の負担 撤去・原状回復の費用を抑えられる可能性がある 撤去・原状回復の費用がかかる
デザインの自由度 前の店舗の雰囲気に左右される 自由に設計できる
主な注意点 設備の故障、リース品、造作の所有関係の確認 解体の費用・工期

 

1-2 居抜きが双方にもたらすメリット

居抜きで引き継ぐと、売る側・引き継ぐ側の双方に、メリットが生まれる場合があります。

売る側(前の借主・所有者)のメリット

・内装や設備を、現金化できる可能性がある
・撤去費用や、原状回復の工事費を、抑えられる可能性がある
・閉店の時期を、次の入居者の入居に合わせて調整しやすい
・長く営業した店を、次の人に引き継げる

引き継ぐ側のメリット

・内装工事の費用と期間を、抑えやすい
・早く開業でき、家賃が発生する期間の、営業していない時間を短くしやすい
・設備を実際に見て、状態を確認してから決められる

 

1-3 居抜きが向かないケース

居抜きがうまくいかないケースもあります。

・設備が古く、故障が多い、または、衛生面で問題がある
・内装の個性が強すぎて、次の人が使いにくい
・業種が特殊で、同じ設備を使える借り手が限られる
・リース品が多く、残債の処理が複雑
・建物自体に、老朽化などの問題がある

こうした場合は、居抜きにこだわらず、スケルトンに戻して引き渡す、あるいは、建物ごと売却して買主に処理を任せるといった方法のほうが、結果的に合理的な場合もあります。

 

第2章 テナントの方向け:造作譲渡の基本

ここからは、店舗を借りて営業している方(立場A)が、内装・設備を次の人に引き継ぐ場合の、基本的な考え方を解説します。

 

2-1 造作譲渡とは

造作(ぞうさく)譲渡は、店舗に取り付けた内装、設備、什器などを、次の借主に引き継ぐことです。一般的には、賃貸借契約とは別に、造作譲渡契約を結びます。

店舗の賃貸借契約には、退去時に原状回復(借りたときの状態に戻すこと)を求める条項が入っているのが一般的です。そのため、造作を次の借主に引き継ぐには、貸主の承諾が欠かせません。

 

2-2 造作譲渡の進め方(流れ)

ステップ 内容 ポイント
1.賃貸借契約書の確認 解約予告の期間、原状回復の条項、造作に関する特約を確認する 解約予告は数か月前と定められていることが多い。期限を逃すと、家賃が余分にかかる
2.貸主への相談 居抜きで引き継ぎたい意向を伝え、承諾の可否を確認する 先に次の借主を決めてから相談すると、話が進めにくいことがある。早めに、相談する
3.造作の洗い出し 譲渡する設備・什器・内装を、リスト化する 型番、年式、状態、所有権(リースかどうか)を整理する
4.譲渡先の募集 居抜き物件を扱う仲介会社などに依頼し、次の借主を探す 業種・条件に合う相手を探す。複数の窓口の活用も検討する
5.条件の協議 造作譲渡料、引渡しの時期、原状回復の範囲を決める 貸主・次の借主・自分の三者の調整が必要
6.契約の締結 造作譲渡契約と、新しい賃貸借契約を結ぶ 貸主の承諾は、書面で残す
7.引渡し・退去 設備を引き渡し、鍵を返却する 引渡し後の責任の範囲を、契約書で明確にする

 

2-3 貸主の承諾が重要な理由

貸主の承諾を得ずに、造作を次の借主に引き渡してしまうと、賃貸借契約の違反とされる可能性があります。承諾を取る際には、次の点を意識してください。

・口頭ではなく、書面で残す(別に承諾書をもらう方法や、造作譲渡契約書に貸主の署名・押印をもらう方法があります)
・承諾の範囲を、明確にする(どの設備を、誰に、いつ引き継ぐのか)
・原状回復義務を、新しい借主が引き継ぐのか、自分が負うのかを、はっきりさせる
・新しい賃貸借契約の条件(賃料、保証金など)が、貸主から提示される場合がある

造作譲渡が成立すると、原状回復の義務は、一般的に、新しい借主に引き継がれる形になります。ただし、これは契約書にどう書くかで決まるため、必ず書面で確認してください。

 

2-4 貸主の承諾が得られない場合

貸主が居抜きを認めない場合もあります。たとえば、建て替えを予定している、別の用途に使いたい、特定の業種の入居を避けたい、といった理由です。この場合は、次のような選択肢を検討します。

・条件を変えて、再度、相談する(業種、入居者の信用力、保証金の増額など)
・スケルトンに戻して、通常どおり退去する
・貸主が、造作を買い取るのか、別の借主を探すのかを相談する
・賃貸借契約に、造作買取請求に関する特約がある場合は、その内容を確認する

賃貸借契約の解釈や、貸主との交渉が難しい場合は、弁護士に相談することも選択肢です。

 

第3章 造作譲渡料はどう決まるのか

 

3-1 造作譲渡料とは

造作譲渡料は、内装・設備・什器などを、次の借主に譲る対価です。決まった基準や、公的な相場表があるわけではなく、当事者の合意で決まります。

一般的には、次のような要素が、金額に影響すると言われています。

要素 内容
設備の年式・状態 新しく、状態が良い設備ほど、評価されやすい。古い、故障が多い設備は、評価が下がる
設備の種類・内容 厨房機器、空調、排気ダクト、グリース阻集器、トイレ、看板など、揃っているほど、次の借主にとって価値が高い
業種との相性 同じ業種で使える設備が多いと、需要が見込める
立地・賃料 人通りが多く、賃料が見合う場所は、需要が高くなりやすい
需給の状況 居抜き物件を探している人が多い時期・エリアでは、条件が良くなる可能性がある
引渡しの時期 次の借主が急いでいるか、売る側が急いで退去したいかで、交渉の力関係が変わる
リース品の有無 リース品は、所有権が自分になく、譲渡料の対象にできない

 

3-2 無償で譲る(0円譲渡)という選択

設備が古い場合や、早く退去したい場合は、造作譲渡料を0円(または、ごくわずか)にして、引き継いでもらうことがあります。これでも、撤去費用や原状回復の費用が、かからなくなるため、結果的にメリットがあるケースが少なくありません。

「いくらで売れるか」ではなく、「撤去・原状回復の費用を含めた、トータルの収支」で考えるのが、居抜き売却のコツです。

 

3-3 説明用の収支比較(仮定)

以下は、考え方を示すための、仮定の数字です。実際の金額は、物件や設備の状況によって大きく異なります。

項目 居抜きで譲渡(仮定) スケルトンにして退去(仮定)
造作譲渡料の収入 +100万円 0円
原状回復工事の費用 0円(次の借主が引継ぎ) ▲300万円
設備の撤去・処分費用 0円 ▲50万円
仲介手数料など ▲20万円 0円
家賃(工事期間の分など) 引渡しまでの期間の家賃(仮定では計上せず) ▲家賃の2か月分など
収支の目安 +80万円 ▲350万円以上

このように、居抜きで引き継げるかどうかで、収支が大きく変わる可能性があります。ただし、これは理想的なケースの仮定です。実際には、貸主の承諾や、次の借主が見つかるかどうかにかかっています。

 

第4章 造作譲渡で見落としやすい5つの注意点

 

注意点1:リース品の扱い

厨房機器や空調機器の中には、リース契約で導入しているものがあります。リース品は、所有権がリース会社にあるため、勝手に譲渡することはできません。一般的には、次のような方法があります。

1.リース契約を解約する:旧借主が、残りのリース料を一括で支払う(リース会社が設備を引き取る場合もあります)
2.旧借主が買い取って、譲渡する:リース会社から所有権を取得し、そのうえで次の借主に譲る
3.次の借主が、リース契約を引き継ぐ:リース会社の審査・承諾が必要

どの方法が可能かは、リース会社との契約内容によります。早めに、リース会社に確認してください。

 

注意点2:設備の故障・不具合と、責任の範囲

造作は、一般的に「現状」のまま引き渡されます。引渡し後に不具合が見つかったときの責任(契約不適合責任)の扱いは、契約書で決めておく必要があります。

・「現状有姿で引き渡し、契約不適合責任は負わない」旨を契約書に明記し、双方が合意しておく
・故障している設備があれば、事前に書面で伝える
・ガス設備、電気設備、空調など、火災や事故につながる設備は、特に丁寧に確認する

なお、知っていた不具合を、故意に隠した場合は、責任を免れられません。不具合は正直に伝えるのが、トラブルを避ける近道です。

 

注意点3:営業許可・届出の扱い

飲食店の場合、営業許可は、店舗ごとの設備や、営業者に対して与えられています。居抜きで次の人が営業を始める場合、一般的には、新しい営業者が、保健所に、営業許可の申請(または、承継に関する手続き)をする必要があります。

・手続きの内容は、営業の形態や、事業の引継ぎの方法によって異なります
・保健所による施設の確認(設備が基準を満たしているか)があります
・防火管理、消防への届出、深夜営業の届出など、他にも必要な手続きがある場合があります

手続きの詳細は、管轄の保健所、消防署に、確認するよう、次の借主にも案内しておくと親切です。

 

注意点4:看板・のれん・屋号・SNSアカウント

造作とは別に、看板、屋号(店名)、ロゴ、商標、予約サイトやSNSのアカウント、顧客リストなどの扱いも、整理しておく必要があります。

・店名を引き継ぐ(営業を引き継ぐ)のか、店名は使わず、設備のみを引き継ぐのか
・看板は、残すのか、撤去するのか
・予約サイトやSNSの情報を、閉じるのか、引き継ぐのか

これらは、造作譲渡契約とは別に、取り決めるのが一般的です。

 

注意点5:賃貸借契約と、造作譲渡契約の整合性

造作譲渡契約の内容が、賃貸借契約(特に、原状回復、転貸、承継に関する条項)と矛盾しないように、注意が必要です。

・造作の所有権が、現在、誰にあるのか(前々の借主から、引き継いだ設備がある場合など)
・貸主が、設備を所有している場合(貸主の設備を、借りて使っている場合)は、譲渡できない
・原状回復の範囲と、費用の負担

不明点は、貸主や、仲介会社に確認し、必要に応じて、弁護士に契約書の確認を依頼してください。

 

第5章 オーナーの方向け:店舗付きの建物・土地を居抜きで売却する

ここからは、店舗が入っている建物や土地を所有している方(立場B・C)が、物件そのものを売却する場合を解説します。

 

5-1 オーナーが売却する場合の、居抜きの意味

オーナーが物件を売却するとき、「居抜き」は、次のような形で関わってきます。

・自分で営業していた店舗の、内装・設備が、建物に残っている
・入居していたテナントが退去し、内装・設備が残っている
・入居中のテナントがいる状態で、そのまま売却する(オーナーチェンジ)

それぞれで、売却の進め方が異なります。

状況 売却の方法 ポイント
A.自分の店の設備が残っている 設備ごと売却する/設備は撤去して売却する 設備の所有は自分。売買契約書で、設備の扱いを明記する
B.テナントが退去し、造作が残っている 造作の所有権の整理が、まず必要 造作が、貸主(オーナー)のものになっているか、テナントのものかを確認する
C.テナントが入居中 賃貸中のまま売却(オーナーチェンジ) 買主は、賃貸借契約を引き継ぐ。賃料・契約内容・敷金の扱いが、価格に影響する

 

5-2 売却の方法:仲介と買取

オーナーが店舗付きの物件を売却する方法は、主に2つです。

  仲介(市場で買主を探す) 買取(不動産会社が直接買い取る)
売却価格 市場価格に近い価格を目指せる 仲介より低くなる傾向がある
売却までの期間 買主が見つかるまで、一定の期間がかかる 条件が合えば、短期間で成立しやすい
設備・内装の扱い 買主の希望によって、居抜きのまま売る/撤去する 現況のまま、買い取ってもらえる場合がある
契約不適合責任 原則として、売主が責任を負う(特約で調整することがある) 特約で、責任を免除(または軽減)する形が多い
向いている状況 時間に余裕があり、少しでも高く売りたい 早く現金化したい。建物が老朽化している。手間をかけたくない

店舗の設備が残っている物件は、買取の場合、現況のまま買い取ってもらえることがあります。撤去・処分の手間と費用を、省ける可能性があるのは、大きなメリットです。

 

5-3 居抜きで売る場合と、更地・スケルトンにする場合の比較

売り方 メリット デメリット・注意点
設備を残した(居抜きの)まま売却 撤去費用がかからない。買主が、設備を利用できる場合は、評価されることもある 設備が古い場合は、評価されにくい。買主が、設備の撤去費用を、価格交渉に使うことがある
設備を撤去してから売却 建物の状態が、はっきりして、買主が検討しやすい 撤去費用が、先にかかる。工事期間中は、売却が進めにくい
建物を解体して、更地で売却 土地として、買主の用途が広がる 解体費用がかかる。更地にすると、固定資産税の優遇(住宅用地の特例)が使えなくなる場合がある(住宅が建っている場合)

どの方法が有利かは、建物の状態、立地、買主の想定によります。不動産会社に、複数の方法で査定を依頼し、比較して決めるのが現実的です。

 

5-4 テナントが入居中の場合:オーナーチェンジの注意点

テナントが入居している店舗物件は、賃貸借契約を引き継ぐ形で売却(オーナーチェンジ)ができます。ただし、次の点に、注意が必要です。

・賃貸借契約の内容(賃料、期間、更新、解約条件)が、価格に影響する
・敷金・保証金は、買主に引き継ぐのが一般的で、精算の方法を、契約書で明確にする
・テナントとの関係(賃料の滞納の有無、近隣トラブルなど)が、買主の評価に影響する
・入居者に、売却の事実を、通知する必要がある
・テナントが、営業を続けられるかが、買主の判断材料になる

賃料の滞納や、契約解除などの問題がある場合は、先に整理しておくと、売却がスムーズです。

 

5-5 店舗物件の価格は、どう見られるか

店舗付きの物件は、住宅と比べて、買主の評価の軸が違います。

・収益性:賃料収入や、営業による収益が見込めるか
・立地:駅からの距離、人通り、周辺の店舗の状況
・建物の状態:築年数、構造、耐震性、設備の状態
・用途地域・建築制限:どんな業種・規模の店舗が、建てられる・営業できるか
・権利関係:賃貸借契約の内容、借地かどうか、共有かどうか

住宅の査定とは、見るポイントが異なるため、店舗や事業用の物件の経験がある不動産会社に、相談するのが望ましいでしょう。

 

第6章 店舗兼住宅を売却する場合(立場C)

世田谷区には、1階が店舗、2階以上が住居という、店舗兼住宅も多くあります。こうした物件を売却するときは、次の点に、注意が必要です。

 

6-1 買主の想定

店舗兼住宅は、買主の層が、次のように分かれます。

・自分で店舗を営業したい人(居抜きで、そのまま使いたい)
・住居として使いたい人(店舗部分を、改装して、住居やオフィスとして使う)
・投資目的の人(賃貸にして、収益を得たい)

設備が残っていると、店舗として使いたい買主には、魅力になる一方で、住居として使いたい買主には、撤去費用の負担として、受け取られることがあります。誰を買主として想定するかで、売り方が変わります。

 

6-2 税金の扱い:居住用と事業用

自宅を売却した場合、居住用財産の3,000万円特別控除などの特例が使える場合があります。ただし、店舗兼住宅の場合、特例の対象になるのは、原則として、居住用に使っている部分とされ、事業用の部分は、対象外になるのが一般的です。

実際の扱いは、居住部分と、店舗部分の、面積割合や、使用状況によって異なります。売却の前に、税理士に確認してください。

 

6-3 設備の売却と、税金

設備を、建物と一緒に売却する場合、設備の価額を、売買代金の中に含めるのか、別に区分するのかで、税務上の扱いが変わる場合があります。建物の譲渡の税務と、設備の売却の税務は、別の考え方がありますので、税理士に、確認することをおすすめします。

 

第7章 売却にかかる税金の基礎知識

税金は、売却の手取りに、直接、影響します。ここでは、一般的な考え方を整理します。(細かな取扱いは、税理士にご確認ください。)

立場 売却の対象 主な税金 注意点
テナント(造作譲渡) 造作・設備 所得税・法人税(譲渡の利益が出た場合)、消費税(課税事業者の場合に、課税売上になる場合がある) 設備の帳簿上の価額(未償却残高)と、譲渡価格の差で、利益・損失が決まる。リース品は、対象外
オーナー(個人) 土地・建物 譲渡所得に対する所得税・住民税(利益が出た場合) 所有期間(5年を超えるかどうか)で、税率が変わる。取得費、譲渡費用を差し引いて計算する
オーナー(法人) 土地・建物 法人税(売却益を、他の損益と合算して課税) 帳簿上の価額との差額で、損益が決まる
店舗兼住宅のオーナー 土地・建物 譲渡所得税。居住用部分は、特例が使える場合がある 居住部分と事業用部分で、扱いが分かれる

 

7-1 売却で赤字になった場合

売却の価格が、取得費や、帳簿上の価額を下回り、譲渡損失になる場合は、通常、譲渡所得税はかかりません。ただし、損失を、他の所得と相殺(損益通算)できるかどうかは、資産の種類や、使用目的によって異なります。

 

7-2 消費税

事業として使っていた設備や、建物(建物部分)を売却すると、消費税の課税対象になる場合があります(土地の売却は、非課税です)。課税事業者であるかどうかで、扱いが異なりますので、税理士に確認してください。

 

7-3 償却資産税

事業用の設備(内装・厨房機器など)には、償却資産税(固定資産税の一種)がかかる場合があります。造作を引き継いだ場合の、申告の取扱いは、一般的に、所有者が、新しい借主に変わるため、新しい所有者が、申告することになります。申告の手続きは、区市町村(東京23区では、都税事務所)に、確認してください。

 

第8章 世田谷区で店舗を売却するときの、エリアの考え方

世田谷区は、エリアごとに、街の性格や、店舗に求められる条件が、大きく異なります。一概には言えませんが、一般的な考え方を整理します。

エリアのタイプ 特徴の一般的な傾向 居抜き・売却での考え方
主要駅周辺の商業エリア(三軒茶屋、下北沢、二子玉川など) 人通りが多く、飲食・物販・サービスの需要が、多い 居抜きの需要が、見込める場合がある。賃料が高めになりやすく、物件の希少性が評価されることがある
駅近の住宅街の商店街(駒沢大学、桜新町、経堂など) 地域の住民を相手にした、店舗が多い 地域密着型の業態に、向いている物件が多い。業態によって、需要が分かれる
住宅街の中の、小規模な店舗(路面店、店舗兼住宅) 駅から離れていても、固定客に支えられている店舗がある 買主の層が限られることがある。住居としての売却も、視野に入れる
幹線道路沿い 車でのアクセスがよく、駐車場の有無が、重要になる 業種によって需要が異なる。建物の規模・駐車場が、評価に影響する

店舗の売却や、居抜きの引継ぎでは、エリア、業種、規模、賃料の水準が、価値に大きく影響します。同じ世田谷区内でも、駅や、通りが違えば、条件は全く変わりますので、地域の事情に詳しい会社に、相談することをおすすめします。

 

第9章 売却を成功させる、準備のポイント

 

9-1 書類と情報を、整理する

売却の前に、次の書類・情報を、揃えておくと、スムーズです。

□ 賃貸借契約書(テナントの場合)
□ 造作・設備のリスト(型番、購入時期、購入価格、状態)
□ リース契約書(リース品がある場合)
□ 営業許可証、消防関係の書類
□ 建物の登記事項証明書、図面、建築確認の書類(オーナーの場合)
□ 賃貸借契約書、賃料・敷金の一覧(入居中の場合)
□ 固定資産税の納税通知書
□ 設備の保証書、取扱説明書、メンテナンスの記録

 

9-2 設備を、きれいにして、状態を伝える

居抜きの評価は、設備の状態に左右されます。

・清掃:厨房機器、排気ダクト、グリース阻集器などを、清掃する
・動作確認:すべての設備の動作を、確認する
・不具合の把握:故障や不具合があれば、事前にリストにして、正直に伝える
・写真の記録:設備の状態を、写真で記録しておく(後のトラブル防止にもなる)

 

9-3 閉店・退去のスケジュールを、組む

賃貸借契約の解約予告期間(多くの場合、数か月前)を、意識して、スケジュールを組みます。

・解約予告を出す前に、貸主と、居抜きの方針を相談する
・次の借主が、決まるまでの間の、家賃負担を、見込んでおく
・従業員への対応、取引先への連絡も、計画的に行う

 

9-4 複数の窓口に、相談する

居抜き物件の仲介会社、不動産会社、貸主、リース会社など、複数の窓口に相談し、情報を集めることが大切です。1社だけの意見に、頼らないようにしましょう。

 

第10章 トラブルを避けるための、チェックポイント

 

10-1 よくあるトラブル

トラブル 原因 予防策
貸主の承諾が得られず、譲渡が白紙に 承諾を、後回しにした 早い段階で、貸主に相談し、承諾を書面で得る
引渡し後に、設備の故障が発覚 状態の説明不足、契約書の取り決めがない 設備リストと、状態の説明を、書面で残す。契約不適合責任の扱いを、明記する
リース品を、勝手に譲渡してしまった 所有権の確認不足 リース契約書を確認し、リース会社に、事前に相談する
原状回復の範囲で、揉める 誰が、何を、どこまで行うか、曖昧 契約書に、範囲と、負担者を明記する
造作譲渡料の支払いが、遅れる・払われない 支払条件が、曖昧 金額、支払い期日、方法を、契約書に明記する。引渡しと同時払いなども検討する
次の借主が、営業許可を取れない 設備が、基準を満たしていない 事前に、保健所に確認してもらうよう、次の借主に、案内する
解約予告の期限を過ぎ、家賃が余計にかかる 賃貸借契約書の確認不足 最初に、契約書を確認し、スケジュールを逆算する

 

10-2 悪質な業者・安易な勧誘に、注意

居抜き物件に関わる業者の中には、相場より、大幅に低い価格での買取を持ちかけたり、契約を急がせたりする場合があります。

・「今日中に決めてください」と、判断を急がせる
・設備の評価を、根拠なく、低く見積もる
・契約書を、書面で、交わさない
・手数料や費用の内訳を、説明しない
・不動産の仲介・売買を行うのに、宅地建物取引業の免許が、確認できない

複数の会社に、相談して、条件を、比較することが、有効です。

 

第11章 「想定ケース」で考える

ここでは、よくあるご相談のパターンをもとにした想定ケースを紹介します。(以下は、典型的な相談パターンをもとにした架空の例であり、実際の成約事例ではありません。)

 

想定ケース1:賃貸の店舗を閉店し、居抜きで引き継ぎたいテナント

状況 駅近の商店街で、数年間、飲食店を営んできた。事情により閉店を決めたが、内装と厨房設備は、まだ状態が良い。原状回復には、費用がかかりそう。

進め方のイメージ
1.賃貸借契約書を確認し、解約予告の期限と、原状回復の条項を、把握する
2.貸主に、居抜きでの引継ぎを、相談する
3.設備をリスト化し、リース品を、整理する
4.次の借主の募集を、依頼する
5.造作譲渡の条件を決め、貸主の承諾を、書面で得る
6.引渡しと、原状回復の範囲を、確認して、退去する

ポイント 貸主への相談を、早く行うことが、成否を分けます。設備の状態を、正直に伝え、リース品を、先に整理しておくと、スムーズです。

 

想定ケース2:店舗兼住宅を相続し、設備が残っている相続人

状況 親が経営していた店舗兼住宅を相続。1階の店舗には、厨房機器や什器が残っているが、相続人は、店を継ぐ予定がない。

進め方のイメージ
1.まず、相続登記を、済ませる(売却のために、名義を整える)
2.建物の状態と、設備の状況を、確認する
3.仲介と買取の、両方で、査定を依頼する
4.設備を残して売るのか、撤去して売るのかを、比較する
5.売却の税金(居住用・事業用の扱い)を、税理士に確認する

ポイント 相続した店舗兼住宅は、登記、設備の整理、税金の、複数の課題が絡みます。買主が、設備を、どう評価するかで、売り方が変わるため、複数の方法で、査定を比較してください。

 

想定ケース3:テナント入居中の店舗ビルを、売却したいオーナー

状況 小規模な店舗ビルを所有。1階に、テナントが入居しており、安定的に、賃料を受け取っている。高齢になり、管理が負担になってきた。

進め方のイメージ
1.賃貸借契約の内容(賃料、期間、解約条件、敷金)を、整理する
2.オーナーチェンジで売却する方針を、検討する
3.売却の査定を、依頼する(賃料収入を踏まえた、評価)
4.テナントに、売却の事実を、伝える準備をする
5.買主が決まったら、賃貸借契約・敷金を、引き継ぐ

ポイント 入居中のまま、売却できるため、テナントの営業を、止めずに済みます。賃貸借契約の内容が、買主の判断に、直結するため、事前に整理しておくことが、重要です。

 

第12章 当社(株式会社ピーエフ&パートナーズ)にご相談いただけること

株式会社ピーエフ&パートナーズは、世田谷区駒沢に拠点を置き、世田谷区・目黒区を中心に、不動産の買取・売却、相続した物件のご相談、賃貸管理、不動産に関するトラブルのご相談まで、幅広く対応しています。20年以上の業界経験と、不動産に関する法務に詳しい弁護士との連携を強みとしています。

当社がお力になれること

・物件の査定・価値の把握:店舗付きの物件、店舗兼住宅などについて、売却価格の目安を、お伝えします。
・売却方法のご相談:仲介での売却、買取での売却など、状況に応じた進め方を、比較しながらご提案します。
・権利関係・契約面の課題への対応:賃貸借契約、権利関係などの、法的な判断が必要な場面では、提携の弁護士と連携して対応します。
・専門家のご案内:税金や登記などの、専門的な判断が必要な場合は、状況に応じて、適切な専門家への相談を、ご案内します。

なお、テナントとして借りている店舗の造作譲渡については、貸主様との調整や、賃貸借契約の内容が、大きく関わります。まずは、ご状況をお聞かせいただければ、可能な範囲で、進め方のご相談に応じます。無理に、売却をお勧めすることはありませんので、お気軽にご相談ください。

売却全般のポイントは、不動産売却で失敗しないためのコツや、あなたに合わせた売却方法のご紹介でも解説しています。

 

まとめ:居抜き売却は、「立場」を整理することから始まる

世田谷区で、店舗を居抜きで売却する際の、要点をあらためて整理します。

1.「居抜き売却」は、立場で、意味が変わる:テナントの造作譲渡か、オーナーの店舗物件の売却かを、まず整理する。
2.テナントの造作譲渡は、貸主の承諾が必須:口頭ではなく、書面で残す。相談は、早めに行う。
3.造作譲渡料は、当事者の合意で決まる:設備の年式、状態、立地、需給で変わる。0円でも、撤去・原状回復の費用が、かからなければ、メリットがある。
4.トータルの収支で考える:譲渡料だけでなく、撤去、原状回復、家賃の負担まで含めて、比較する。
5.リース品、設備の故障、営業許可、屋号の扱い:見落としやすい項目を、先に整理する。
6.オーナーは、仲介と買取を比較する:設備を、残すか、撤去するかも、査定で比べる。
7.店舗兼住宅は、税金の扱いが分かれる:居住用と事業用で、特例の適用が異なる。税理士に、確認する。
8.エリアと業種で、需要は変わる:地域の事情に詳しい会社に、相談する。
9.書面と情報の整理が、トラブルを防ぐ:設備リスト、契約書、状態の記録を、残しておく。

店舗の売却や、居抜きの引継ぎは、関わる人が多く、確認すべき点も多い手続きです。まず、ご自身の立場と、契約内容を整理し、早い段階で、専門家に相談することが、スムーズな解決への近道です。

店舗の売却・居抜きのご相談のご案内

「店舗付きの物件を、売却したい」「居抜きで引き継げるか、相談したい」「店舗兼住宅の、売り方を知りたい」という方は、お気軽にご連絡ください。

株式会社ピーエフ&パートナーズ 〒154-0012 東京都世田谷区駒沢2丁目6番2号 アイタワー4F(駒沢大学駅より徒歩2分) 電話:03-6805-5999 宅地建物取引業免許:東京都知事(3)第87902号

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よくある質問(FAQ)

Q1. 「居抜き」と「スケルトン」は、どちらで売るのが得ですか? A. 一概には言えません。居抜きは、撤去や原状回復の費用を抑えられる可能性がありますが、設備の状態や、貸主の承諾に左右されます。トータルの収支で、比較してください。

Q2. 貸主の承諾がないと、居抜き譲渡はできませんか? A. 店舗の賃貸借では、原状回復義務があるのが一般的で、造作の譲渡には、貸主の承諾が必要になるのが通常です。承諾なしに進めると、契約違反とされる可能性があります。書面での承諾を、得てください。

Q3. 造作譲渡料の相場は、いくらですか? A. 公的な相場表はなく、設備の状態、立地、業種、需給で変わります。当事者の合意で決まるため、複数の窓口で意見を聞くことをおすすめします。0円で譲渡する場合もあります。

Q4. リース中の厨房機器は、譲渡できますか? A. リース品は、所有権がリース会社にあるため、勝手に譲渡できません。リース契約の解約、買取、契約の引継ぎなどの方法がありますが、リース会社の承諾が必要です。

Q5. 譲渡した設備が、引渡し後に壊れたら、責任を負いますか? A. 契約書の内容によります。「現状有姿で、契約不適合責任を負わない」と明記し、合意しておくのが一般的です。ただし、不具合を知っていて隠した場合は、責任を負う可能性があります。

Q6. 飲食店の営業許可は、次の人に引き継げますか? A. 営業の形態や、事業の引継ぎの方法によって、必要な手続きが異なります。一般的には、新しい営業者が、保健所で、手続きを行います。詳細は、管轄の保健所に、ご確認ください。

Q7. 店舗兼住宅を売るとき、3,000万円特別控除は使えますか? A. 居住用に使っている部分は、特例の対象になる場合があります。事業用の部分は、対象外となるのが一般的です。面積割合や、使用状況で扱いが異なるため、税理士に、確認してください。

Q8. テナントが入居中でも、建物を売却できますか? A. できます。賃貸借契約を引き継ぐ形(オーナーチェンジ)で売却できます。賃料や契約内容が、価格に影響します。

Q9. 設備が古く、値段がつかなそうです。どうすればよいですか? A. 0円で譲渡して、撤去・原状回復の費用を、省く方法があります。オーナーの場合は、現況のまま買い取ってもらえる、買取も、選択肢です。

Q10. まず、何から始めればよいですか? A. 立場(テナントか、オーナーか)を整理し、賃貸借契約書(または、登記の書類)を、確認してください。そのうえで、貸主、または、不動産会社に、相談してください。

 

免責事項

本記事は、一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、個別の法律・税務に関する助言を行うものではありません。契約内容、物件の状況、事業の形態によって、取るべき対応は大きく異なります。法律や制度は、改正されることがあります。実際の手続きや判断にあたっては、必ず弁護士、税理士、行政書士などの専門家、または、公的機関の公式情報をご確認ください。また、記事中の金額、割合、期間は、説明のための仮定または一般的な目安であり、個別の結果を保証するものではありません。

 

参考情報

・東京都主税局:償却資産(固定資産税)について
・国税庁:マイホームを売ったときの特例、譲渡所得、消費税に関する情報
・東京都保健医療局(または管轄の保健所):飲食店営業許可について
・東京消防庁:防火管理・消防関係の届出について
・法務省:民法(契約不適合責任等)に関する情報

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