借地権のトラブル解決ガイド|地主との交渉から借地非訟・売却まで
はじめに:借地権のトラブルは「一人で抱え込まない」ことが第一歩
「契約更新のタイミングで、地主から高額な更新料を求められた」 「借地上の家を売りたいが、地主が承諾してくれない」 「建物が古くなったので建て替えたいのに、地主が許可してくれない」 「地主が代替わりして、突然、地代の値上げや土地の返還を求められた」 「親から相続した借地権付きの家を、どう扱えばよいか分からない」
借地権(他人の土地を借りて、その上に自分の建物を所有する権利)に関するトラブルは、東京をはじめ都市部の住宅地で、昔から数多く起きています。借地は、土地の所有者(地主)と、建物の所有者(借地人)が、何十年にもわたって関係を続けるという特殊な契約です。契約書の内容が古かったり、口約束だったりすることも多く、代替わりによって、当事者の間の信頼関係が途切れてしまうことも、トラブルの大きな原因になります。
借地権の問題は、法律(借地借家法など)の仕組みを知っているかどうかで、結果が大きく変わる分野です。地主の主張が、必ずしも法的に通るとは限りませんし、借地人の側にも、やってはいけないことがあります。
この記事では、借地権のトラブルに直面している方が、どんな問題が起きやすいのか、どんな解決の道筋があるのか、裁判所の手続き(借地非訟)や売却・底地の買取りといった出口をどう考えるのかを、順を追って解説します。
なお、この記事は2026年10月時点の情報をもとにした一般的な解説です。借地権の問題は、契約内容や経緯によって結論が大きく変わります。実際の対応に進む前に、弁護士、司法書士、税理士などの専門家にご確認ください。
この記事でわかること
・借地権の種類(旧法借地権・普通借地権・定期借地権)と、それぞれの違い
・借地権トラブルの典型パターンと、解決の方向性
・更新、承諾料、建替え、地代、地主の交代、立退き要求などへの対処法
・話し合いで進まないときの、調停・訴訟・借地非訟の使い分け
・借地権の「出口」:売却、底地の買取り、同時売却などの考え方
・借地権の売却や相続にかかる税金の基本
・やってはいけないこと、トラブルを防ぐためのチェックリスト
・誰に、どの順番で相談すればよいか
第1章 借地権とは:まず基本を整理する
1-1 借地権の基本的な仕組み
借地権とは、建物を所有する目的で、他人の土地を借りる権利です。この場合の関係者は、次の二者です。
・借地権者(借地人):土地を借りて、その上に建物を所有している人
・借地権設定者(地主):土地の所有者。地主の持つ、借地権の付いた土地の所有権を「底地(そこち)」と呼びます
借地人は、土地そのものは所有していませんが、その土地の上に建物を所有しており、**土地を利用する権利(借地権)**を持っています。
1-2 借地権には2つの法的な形がある
| 種類 | 内容 | 譲渡・転貸の扱い |
|---|---|---|
| 地上権 | 土地を直接支配する権利(物権) | 地主の承諾なしに譲渡できる(ただし実際の借地には少ない) |
| 賃借権 | 地主に土地を貸してもらう権利(債権)。借地権の大半はこちら | 地主の承諾が必要(無断譲渡は解除原因になりうる) |
実際の借地の多くは、賃借権です。このため、借地権を第三者に売却するには、原則として、地主の承諾が必要になります。
1-3 借地権の種類と、契約のルールの違い
借地権は、契約した時期や形態によって、適用されるルールが異なります。ご自身の借地権が、どの種類にあたるのか、まず確認することが重要です。
| 種類 | 契約時期・特徴 | 存続期間・更新 |
|---|---|---|
| 旧法借地権 | 1992年(平成4年)7月31日以前に設定された借地権。旧借地法が適用される(更新後も旧法のまま) | 期間の定めがない場合、木造など非堅固な建物は30年、堅固な建物は60年。地主に正当事由がない限り、更新を拒絶できない |
| 普通借地権 | 1992年(平成4年)8月1日以降に設定された、借地借家法の借地権 | 存続期間は30年。更新後は、1回目が20年、2回目以降は10年。地主に正当事由がない限り、更新を拒絶できない |
| 定期借地権(一般) | 存続期間を50年以上とし、更新がない借地権 | 期間満了で終了。原則として更地にして返還する |
| 建物譲渡特約付借地権 | 30年以上の期間で、期間満了時に地主が建物を買い取る旨を定めた借地権 | 期間満了時に、建物を地主に譲渡して終了 |
| 事業用定期借地権 | 事業用の建物所有を目的とし、10年以上50年未満で設定する借地権(公正証書での契約が必要) | 期間満了で終了。更新なし |
ポイント:旧法借地権と普通借地権は、地主に正当な事由がなければ更新を拒めないという、借地人にとって強く保護された権利です。一方、定期借地権は、更新がなく、期間満了で終了するという、まったく性質の異なる権利です。契約書に、「定期借地権」と明記されているかを、まず確認してください。
1-4 契約書は、すべての出発点
借地トラブルの解決では、契約書の内容が、最初に確認すべき資料です。
・契約の日付(旧法か、借地借家法か)
・契約の種類(普通借地権か、定期借地権か)
・存続期間、更新に関する定め(更新料の定めの有無)
・地代の額と、改定に関する定め
・譲渡・転貸、増改築、建替えに関する特約(承諾が必要か、承諾料の定めがあるか)
・契約を解除できる場合の定め
契約書が見つからない場合や、口約束だけの場合でも、借地権が否定されるわけではありません。地代の領収書、建物の登記簿、過去の更新の際の書類などから、契約の内容を整理できることがあります。
第2章 借地権トラブルの全体像
借地権のトラブルは、典型的なパターンに分類できます。まず全体像を整理しましょう。
| トラブルの種類 | 典型的な場面 | 主な解決の方向 |
|---|---|---|
| 更新に関するトラブル | 更新料の請求、更新の拒絶、更新手続きの不備 | 契約書の確認、法定更新、正当事由の有無の検討、交渉 |
| 譲渡・売却に関するトラブル | 借地権付き建物を売りたいが、地主が承諾しない・高額な承諾料を求める | 交渉、借地非訟(譲渡許可)、地主への底地買取りの提案、同時売却 |
| 建替え・増改築に関するトラブル | 老朽化した建物を建て替えたいが、地主が承諾しない | 交渉、借地非訟(増改築許可)、承諾料の支払い |
| 地代に関するトラブル | 地代の値上げ要求、値下げ要求、滞納 | 地代増減額請求、調停、供託 |
| 地主の交代に関するトラブル | 地主が代替わりした、底地が第三者に売却された | 新地主の確認、借地権の対抗要件の確認、契約内容の再確認 |
| 立退き・土地返還の要求 | 地主から、契約を終了して土地を返してほしいと言われた | 正当事由の有無の検討、立退料の交渉、法的手続き |
| 相続に関するトラブル | 借地権を相続したが、地主が名義書換料を要求する | 承諾不要の確認、相続登記、契約の再確認 |
| 契約違反に関するトラブル | 無断の増改築・譲渡、契約違反の主張 | 事実関係の確認、信頼関係の判断、交渉・法的手続き |
| 契約書・境界に関するトラブル | 契約書がない、境界が不明確、越境がある | 資料の収集、測量、境界の確認 |
以降の章で、それぞれのトラブルへの対処を詳しく見ていきます。
第3章 トラブル別の解決方法
3-1 更新に関するトラブル
よくある場面
・契約期間の満了が近づき、地主から更新料を請求された
・更新の手続きをしないまま、期間が過ぎてしまった
・地主から、更新はしないと言われた
更新料とは 更新料は、契約を更新する際に、借地人が地主に支払う金銭です。更新料は、法律で定められた義務ではありません。契約書に、更新料の支払いが明記されている場合や、これまでの慣行がある場合は、支払いが求められることがありますが、契約に定めがない場合に、当然に支払い義務が生じるわけではない、とされることが多いのが実情です。金額の相場は、一般に、更地価格や借地権価格の数%程度といわれることがありますが、地域や契約により大きく異なり、法律で決まった金額はありません。
法定更新 借地の期間が満了した後も、借地人が土地を使い続けていて、地主が遅滞なく異議を述べなかった場合は、従前と同じ条件で、契約が更新されたものとみなされます(法定更新)。また、建物が残っている場合、借地人が更新を請求すれば、地主に正当事由がない限り、契約は更新されます。更新手続きを忘れたからといって、直ちに借地権を失うわけではありません。
地主が更新を拒絶できる場合:正当事由 地主が更新を拒絶するには、**正当事由(正当な理由)**が必要です。正当事由は、次のような要素を総合的に考慮して判断されます。
・地主と借地人が、それぞれ土地を必要とする事情
・これまでの契約の経過(地代の支払い状況、信頼関係など)
・土地の利用状況
・地主が、立退料などの財産上の給付を申し出ているか
「自分の土地だから返してほしい」というだけでは、正当事由が認められないことが一般的です。ただし、立退料の提供などを含めて判断されるため、専門家に、見通しを確認することが大切です。
対処のポイント
1.契約書で、更新に関する定めを確認する
2.更新料の請求があった場合は、契約書や過去の慣行を確認し、すぐに支払わない(交渉の余地がある)
3.更新の合意をしたら、**書面(更新契約書、覚書)**に残す
4.拒絶された場合は、弁護士に相談し、正当事由の有無を検討する
3-2 地代に関するトラブル(増額・減額・滞納)
地代の増減額請求 地代が、税金の増減、土地の価格の上昇・下落、近隣の地代と比べて、不相当になったときは、当事者は、将来に向かって、地代の増額または減額を請求できます(借地借家法11条)。
・話し合いがまとまらない場合は、まず調停(裁判所での話し合い)を申し立てる必要があります(調停前置)
・調停でも合意できなければ、訴訟で決着をつける
・地主から増額を請求された場合、増額を認める裁判が確定するまでは、借地人は、自分が相当と考える額の地代を支払えば足ります。ただし、増額が認められたときは、不足額に年1割の利息を付けて支払う必要があります
地主が、地代の受け取りを拒否した場合 地主が地代を受け取らない場合は、法務局に供託することで、地代を払ったものとして扱われます。地代を払わずに放置すると、滞納を理由に、契約を解除される口実を与えます。
地代を滞納してしまった場合 地代の滞納は、契約の解除の理由になりえます。ただし、地主が解除するには、**催告(期限を定めて支払いを求める)**が必要であり、また、単なる1回の滞納では、解除が認められないことが一般的です(当事者間の信頼関係が破壊されたかどうかが判断されます)。滞納が続いている場合は、すぐに、弁護士に相談し、解消の方法を検討してください。
対処のポイント
1.地代の増額請求があっても、すぐに応じない。根拠(固定資産税の推移、近隣の地代など)を確認する
2.自分が相当と考える額を、必ず支払い続ける(払わないのが、最もまずい)
3.受け取りを拒否されたら、供託を検討する
4.地代の領収書や、振込の記録は、すべて保管する
3-3 借地権の譲渡(売却)に関するトラブル
借地権付きの建物を売却するときの基本ルール 賃借権の借地権付き建物を売却するには、地主の承諾が必要です。承諾を得ずに売却すると、契約違反として、解除の理由になることがあります。ただし、判例上、背信行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には、解除が制限されることもあります。基本は、承諾を得て、正式に手続きを進めるべきです。
承諾料(譲渡承諾料) 承諾を得る際に、借地人が地主に、**承諾料(名義書換料)**を支払うことが、実務上、広く行われています。金額は、借地権価格の10%程度といわれることがありますが、これは目安にすぎず、契約や地域、交渉によって異なります。法律に、承諾料の金額を定めた規定はありません。
地主が、承諾しない・高額な承諾料を求める場合 地主が承諾してくれない場合や、不当に高額な承諾料を求める場合は、借地非訟という裁判所の手続きを利用できます。借地人が裁判所に、「土地の賃借権の譲渡の許可」を申し立てると、裁判所は、地主の承諾に代わる許可を与えることができます。その際、裁判所が、適正な承諾料(財産上の給付)を決めます。
地主の優先的な買取り(介入権) 借地人が、譲渡の許可を申し立てたとき、地主が、自ら、建物と借地権を買い取りたいと申し立てることができる制度もあります(借地非訟の一類型)。この場合、裁判所が定める価格で、地主が譲り受けることになります。
対処のポイント
1.売却を決める前に、地主に、売却の意向を伝え、承諾の見通しを確認する
2.承諾料の金額は、根拠を確認し、交渉する
3.承諾が得られない場合は、弁護士に相談し、借地非訟を検討する
4.承諾書は、書面で取得し、実印・印鑑証明などの手続きも確認する
3-4 建替え・増改築に関するトラブル
よくある場面
・老朽化した建物を建て替えたい
・リフォームや増築をしたい
・地主が、承諾してくれない、または高額な承諾料を求める
契約に「増改築禁止特約」がある場合 借地契約には、「地主の承諾なしに、増改築をしてはならない」という特約があることが、よくあります。この特約がある場合、地主の承諾を得ずに、大規模な増改築や建替えを行うと、契約違反になるおそれがあります。
承諾料(建替承諾料・増改築承諾料) 一般に、更地価格の3%程度といわれることがありますが、これも目安にすぎません。契約や交渉によって異なります。
地主が承諾しない場合:借地非訟 地主が承諾してくれない場合、**借地非訟(借地条件の変更、増改築の許可)**を申し立てることで、裁判所が、地主の承諾に代わる許可を与えることができます。裁判所は、予定する増改築が、土地の通常の利用上、相当かどうかを判断します。
注意:小規模な修繕や、通常の維持管理は、特約があっても、通常、地主の承諾を要しない範囲です。ただし、どこまでが承諾の不要な範囲かは、契約や事情により判断が分かれるため、工事に着手する前に、弁護士や専門家に相談してください。
3-5 地主が変わったときのトラブル
よくある場面
・地主が亡くなり、子どもが相続した
・地主が、底地を不動産会社や第三者に売却した
・新しい地主から、地代の値上げや、契約内容の見直しを求められた
・「底地を買わないか」と持ちかけられた
まず知っておきたいこと 地主が変わっても、借地人の借地権は、そのまま存続します。新しい地主は、元の地主の契約上の地位を、引き継ぎます。したがって、新地主が、契約内容を一方的に変えることはできません。
借地権の「対抗要件」 借地人が、新しい地主(土地の買主)に対して、借地権を主張するには、借地上の建物の登記(または、その他の対抗要件)が必要です。建物が、亡くなった親の名義のままになっている場合、相続登記を済ませておくことが重要です。
地代の支払先に注意 地主が代わったと言われたら、新しい地主が、土地の所有権移転登記を受けているかを、登記簿で確認してください。登記を確認しないまま、新地主を名乗る人に地代を払うと、本当の所有者に二重に請求されるおそれがあります。
対処のポイント
1.登記簿で、土地の所有者を確認する
2.契約内容(期間、地代、特約)が引き継がれることを確認する
3.地代の増額などの要求があっても、すぐに応じない
4.底地を買わないかと言われた場合は、価格の妥当性を、複数の専門家で検討する
3-6 地主から、土地の返還・立退きを求められたとき
よくある場面
・契約更新のタイミングで、「更新しない。土地を返してほしい」と言われた
・地主が、土地を売却・開発したいという理由で立退きを求めている
基本的な考え方 旧法借地権と普通借地権では、地主が更新を拒絶したり、契約を終了させたりするには、正当事由が必要です。地主の、一方的な都合だけでは、認められないのが原則です。
立退料 正当事由の判断では、地主が申し出る**立退料(財産上の給付)**も考慮されます。立退料の金額は、借地権の価格や、移転にかかる費用などを踏まえて、事案ごとに決まるため、一律の基準はありません。
定期借地権の場合 定期借地権は、更新がなく、期間満了で終了するため、原則として、土地を返還する必要があります。ただし、契約の内容(建物の取扱い、原状回復の範囲など)は、契約書によって異なるため、事前に確認が必要です。
対処のポイント
1.契約の種類(定期借地か、更新のある借地か)を確認する
2.地主の要求に、すぐに応じたり、書面にサインしたりしない
3.弁護士に相談し、正当事由の有無、立退料の考え方を確認する
4.地主との話し合いの内容は、記録に残す
3-7 相続に関するトラブル
借地権は、相続できる 借地権は、財産として、相続人に引き継がれます。相続は、借地権の「譲渡」にはあたらないため、地主の承諾は不要で、承諾料(名義書換料)を支払う義務も、原則としてありません。
よくあるトラブル
・地主が、相続を理由に、名義書換料や承諾料を要求してきた → 原則として、応じる義務はない(契約に特別な定めがないかも確認)
・建物の名義が、亡くなった親のまま、相続登記をしていない → 借地権の対抗要件にも関わる。2024年4月から相続登記は義務化(3年以内)
・相続人が複数いて、借地権・建物が共有になっている → 共有の問題が加わる
・相続人以外の人に、遺言で、借地権付きの建物を譲る(遺贈)場合 → 地主の承諾が必要となる場合がある
対処のポイント
1.相続が発生したら、早めに、建物の相続登記を行う
2.地主に、相続の事実を、書面で通知する(承諾を求めるのではなく、通知)
3.地主が、不当に承諾料などを求めてきた場合は、弁護士に相談する
4.共有になっている場合は、共有物の扱いについて、別途整理する
3-8 建物の老朽化・滅失に関するトラブル
建物が古くなった場合 旧法借地権では、期間の定めがない借地権について、建物が朽廃(社会経済上の効用を失うほど老朽化)すると、借地権が消滅するという規定があります。ただし、朽廃と認められるには、相当な状態であることが必要で、単に古い、というだけでは該当しません。
建物が火災などで滅失した場合 借地借家法では、存続期間中に建物が滅失して、再築する場合の扱いが定められています。地主の承諾を得て再築した場合は、一定期間、借地権の存続期間が延長されます。承諾が得られない場合は、借地非訟の手続きを利用できる場合があります。
対処のポイント
・建物の老朽化が進んでいる場合は、建替えや大規模修繕の方針を、早めに検討する
・地主との関係が良好なうちに、将来の建替えについて、話し合っておく
3-9 契約書がない・境界が不明確・越境がある
契約書がない場合 借地の契約書は、数十年前のものが多く、紛失していたり、口約束だったりすることもあります。この場合も、次のような資料から、契約の内容を整理できます。
・地代の領収書、振込の記録
・建物の登記簿
・過去の更新時の書類(更新料の領収書など)
・地主とのやりとりの記録(手紙、メールなど)
境界・越境のトラブル 借地の境界が不明確な場合や、隣地との間で越境がある場合は、**測量(土地家屋調査士に依頼)**により、現状を明らかにします。借地の場合、地主と隣地の所有者との間で、境界の確認が必要になることもあります。売却や建替えの前に、整理しておくことをおすすめします。
第4章 話し合いで進まないとき:解決の手段と使い分け
借地権のトラブルは、まず話し合いから始めます。それでも解決しない場合は、次のような手段があります。
| 手段 | 内容 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 話し合い(交渉) | 当事者同士、または専門家を介して、条件を調整する | 多くのトラブルの出発点。関係を壊さずに解決したいとき |
| 書面による通知(内容証明郵便など) | 主張を、証拠として残す形で伝える | 相手が応じない。後の手続きに備えたいとき |
| 民事調停 | 裁判所で、調停委員を介して話し合う手続き | 地代の増減額など。当事者間の話し合いが難しいが、合意の余地があるとき |
| 借地非訟 | 地主の承諾に代わる許可などを、裁判所に求める手続き(借地条件変更、増改築許可、再築許可、譲渡・転貸許可、競売等に伴う譲受け許可、地主の譲受け申立ての6類型) | 地主が、承諾(建替え、売却など)を拒否・不当に高額な承諾料を要求しているとき |
| 訴訟(裁判) | 裁判所が、判決で権利関係を判断する | 契約の解除、立退き、地代の確定など、法的な判断が必要なとき |
借地非訟とは
借地非訟は、借地人と地主の間で、承諾などをめぐって対立している場合に、裁判所が、地主の承諾に代わる許可を与える特別な手続きです。通常の訴訟のように、勝ち負けを争うのではなく、裁判所が、当事者の利益の調整を図ることを目的としています。
特徴
・手続きの途中で、鑑定委員会(不動産鑑定士などの専門家で構成)の意見が聴かれる
・許可を与える際に、承諾料などの財産上の給付が命じられることがある
・和解(話し合いでの解決)も、勧められる
・決定に不服がある場合は、抗告ができる
・申立てには、申立手数料や、郵便切手の予納が必要
借地非訟は、専門性が高く、申立書の書き方や、主張の整理が結果を左右するため、弁護士に依頼して進めることが、一般的です。
弁護士に相談するタイミング
次のような場合は、早めに弁護士に相談しましょう。
・地主から、契約解除や、立退きを求められた
・更新を拒絶された
・地主が、承諾を拒否しており、話し合いに応じない
・地代の増額を、一方的に求められ、応じないと解除すると言われている
・内容証明郵便や、裁判所からの書類が届いた
・地主との話し合いが、感情的になっている
第5章 借地権の「出口」:売却・買取り・整理の4つの方法
借地権のトラブルを根本的に解決する方法として、借地権・底地の関係を整理する(出口を考える)ことがあります。主な方法は、次の4つです。
| 方法 | 内容 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|---|
| ① 借地権(建物)のみを売却 | 地主の承諾を得て、借地権付き建物を、第三者に売却する | 借地人の負担(地代、更新料など)から解放される | 買い手が限られる。承諾料が必要。ローンが使いにくい場合がある。価格は、完全な所有権より低い |
| ② 底地を買い取り、完全な所有権にする | 借地人が、地主から底地を買い取る | 地代・更新料・承諾の問題がなくなる。土地建物が、完全な所有権になる | 買取資金が必要。価格交渉が難しい |
| ③ 借地権と底地を、同時に売却 | 地主と借地人が協力して、土地建物を一括して第三者に売却し、代金を配分する | 完全な所有権として売るため、高く売れる可能性がある。両者が納得できる配分が可能 | 地主の協力が必要。配分割合の合意が難しい |
| ④ 借地権を、地主に買い取ってもらう(返還) | 借地人が、建物を解体するなどして、借地権を地主に返還し、対価を受け取る | 地主が、土地を取り戻したい場合に、話が進みやすい | 地主に買取りの意思・資金が必要。対価の交渉が難しい |
5-1 借地権の価格は、どう考えるか
借地権の価格は、更地の価格に、借地権割合を掛けて考えるのが、基本的な目安です。国税庁が公表する路線価図には、地域ごとの借地権割合(A〜Gの記号で、おおむね30%〜90%)が示されており、相続税や贈与税の評価に使われます。東京23区の住宅地では、60%〜70%程度の地域が少なくありません(地域により異なります)。
ただし、これは税務上の評価の考え方であり、実際の売買価格は、契約内容、地代の水準、更新の時期、建物の状態、買い手の需要などによって、大きく変わります。
底地(地主が持つ、借地権付きの所有権)の価格は、一般に、更地価格から借地権相当を引いた残りが目安になりますが、実際の取引価格は、地代収入や、将来の見通しなどを踏まえて決まるため、更地価格に底地割合を掛けた額と一致するとは限りません。
借地人と地主が、お互いの権利を持ち寄って、土地建物の全体を第三者に売却する方法です。
・買主にとっては、完全な所有権を取得できるため、買い手がつきやすく、価格も高くなる傾向
・売却代金は、借地権と底地の価値の比率(借地権割合などを参考)で配分するのが一般的
・配分の割合は、当事者間の交渉で決まるため、公平な評価が重要
地主と借地人の、関係が悪い場合は、難しいこともありますが、**お互いが得をする(双方にメリットがある)**関係を築けるなら、有力な解決策になります。
5-3 等価交換・一部返還という選択
土地の一部を地主に返し、残りの部分を、借地人が所有権として取得する、という方法(借地権と底地の、等価交換)もあります。分筆や、境界の確定が必要になり、法令上の制限(最低敷地面積、接道など)を満たすかの確認も必要です。専門家(不動産会社、土地家屋調査士、弁護士、税理士)に相談して、慎重に検討する必要があります。
第6章 借地権付き建物を売却する際の実務
借地権付き建物の売却は、一般の不動産の売却と異なる点が多くあります。
6-1 売却の基本的な流れ
1.契約書の確認:借地の種類、譲渡に関する特約を確認する
2.査定・相談:借地権付き建物の扱いに慣れた不動産会社に、査定を依頼する
3.地主への相談:売却の意向を伝え、承諾の見通し、承諾料を確認する
4.買主の選定・売買契約:地主の承諾を、停止条件とするなど、慎重に契約する
5.地主の承諾書の取得:承諾料の支払いと、承諾書の取り交わし
6.名義変更・引き渡し:建物の所有権移転登記と、借地契約の承継
6-2 借地権付き建物が、売りにくい理由
・買い手が、地代・更新料・承諾料などを負担する必要があり、敬遠されやすい
・住宅ローンの審査が、一般の物件より厳しくなる場合がある(金融機関による)
・土地は自分のものにならないため、将来の建替えや売却に制約がある
・契約の内容(期間、更新、特約)によって、評価が大きく異なる
6-3 売却の相手:個人か、買取業者か
借地権付き建物は、一般の個人に売却することもできますが、買い手が見つかりにくいことがあります。そのような場合は、借地権付き物件を取り扱う買取業者に、売却する方法があります。
・買取業者は、地主との交渉や、承諾料の手続きに慣れていることが多い
・比較的短期間で、売却できる可能性がある
・価格は、一般の個人への売却より低くなる傾向がある
6-4 手取りの考え方(説明用の計算例)
以下は、考え方を示すための仮定の数字です。実際の金額は、物件ごとに異なります。
| 項目 | 金額(仮定) | 備考 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 2,500万円 | 借地権付き建物としての売却価格(仮定) |
| 譲渡承諾料 | ▲約250万円 | 借地権価格の10%程度と仮定。売主負担とした場合(買主負担とする場合もあり) |
| 仲介手数料(税込の上限額) | ▲約89万円 | 売買価格×3%+6万円+消費税で試算 |
| その他の費用(登記、清掃など) | ▲約30万円 | 仮定 |
| 手取りの目安(税引前) | 約2,131万円 | 譲渡所得税は別途 |
承諾料を、売主・買主のどちらが負担するかは、契約で決める事項であり、売却価格にも影響します。売却前に、不動産会社と相談して、条件を整理しておきましょう。
第7章 借地権と税金:知っておきたい基本
借地権の売却や相続には、税金が関わります。基本を整理します。
7-1 借地権付き建物を売却したときの譲渡所得税
借地権付き建物を売却して、利益(譲渡所得)が出た場合は、土地(借地権)と建物の譲渡所得として、譲渡所得税・住民税がかかります。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
・取得費:借地権を取得したときの費用(借地権の購入代金、権利金など)や、建物の取得費(減価償却後)
・譲渡費用:仲介手数料、承諾料(譲渡承諾料が、売却のために支払われた場合)など
所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」として、税率は約20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税を含む)です。5年以下は「短期譲渡所得」として、約39.63%です。相続した場合は、亡くなった方の取得時期を引き継ぎます。
取得費が分からない場合は、売却価格の5%を取得費とする計算が原則となり、税額が大きくなりやすいため、当時の契約書・領収書などは、できる限り探してください。
7-2 居住用財産の3,000万円特別控除
自分が住んでいた家を売却する場合、一定の要件を満たすと、最大3,000万円の譲渡所得の特別控除を受けられる特例があります。借地権付きの建物の売却でも、要件を満たせば、利用できる可能性があります。住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却することなど、細かい要件があります。
7-3 借地権の相続税評価
借地権を相続した場合、相続税の計算では、路線価図の借地権割合を使って、評価されます。契約の種類(普通借地権、定期借地権など)や、地代の水準、契約内容によって、評価の方法が異なる場合があります。
7-4 借地権の「贈与」とみなされるケースに注意
借地人が、地主に無償で土地を返還したり、地主が不当に安く借地権を買い取ったりすると、借地権の贈与(地主への贈与)とみなされ、贈与税が課される場合があります。また、底地や借地権の売買、交換が、時価と著しく乖離していると、贈与税の問題が生じることがあります。実行する前に、必ず税理士に確認してください。
7-5 更新料・承諾料の税務
更新料や承諾料を支払った借地人にとって、税務上の扱い(経費になるか、取得費に含まれるか、など)は、土地の利用目的(居住用、事業用、賃貸用)や、支払いの性質によって異なります。個別に、税理士に確認してください。
第8章 借地権トラブルで、やってはいけないこと
1.地主の承諾なしに、借地権を譲渡・転貸する
建物の売却や、第三者への貸し出し、名義変更(贈与や、親族への名義変更も含む)を、地主の承諾なしに行うと、契約違反として、解除の理由を与えるおそれがあります。
2.地主の承諾なしに、増改築・建替えを行う
契約に増改築禁止特約がある場合、無断で工事を行うと、契約違反となり、解除や、工事の差止めを請求されるおそれがあります。
3.地代を、一方的に減額・停止する
地代の増額に不満があっても、払わないのは、最もまずい対応です。自分が相当と考える額を、払い続けるか、受け取りを拒否された場合は供託してください。
4.地主からの書面に、その場でサインする
更新契約書、覚書、合意書などに、内容を十分に確認せずにサインすると、不利な条件を受け入れたことになってしまう場合があります。専門家に、内容を確認してもらいましょう。
5.新しい地主の言い分を、登記を確認せずに信じる
地主が代わった、と言われても、登記簿で、所有権の移転を確認してください。
6.感情的な言葉で、やり取りをする
地主と借地人は、長期にわたる関係です。感情的な言葉や、一方的な通告は、関係を決定的に悪化させ、解決を難しくします。連絡は、冷静に、記録に残る形で行いましょう。
7.証拠・書類を、捨てる・失くす
契約書、更新契約書、地代の領収書、地主とのやりとりの記録などは、後の交渉や裁判で、重要な証拠になります。すべて保管してください。
8.放置する
「そのうち、何とかなる」と放置すると、地主の代替わり、建物の老朽化、相続の発生などで、問題が複雑化し、解決のコストが増えます。
第9章 トラブルを防ぐ:借地権の「5分チェックリスト」
今のうちに、次の項目を確認しておくと、将来のトラブルを防ぎやすくなります。
契約内容
□ 契約書は手元にあるか
□ 契約の種類は何か(旧法借地権・普通借地権・定期借地権)
□ 契約期間と、次の更新時期はいつか
□ 更新料に関する定めはあるか
□ 譲渡・転貸、増改築・建替えに関する特約(承諾料の定め)はあるか
□ 地代の額、改定の定めはどうなっているか
権利・登記
□ 建物の登記は、現在の所有者の名義になっているか
□ 相続が発生していて、登記が未了ではないか
□ 土地の所有者(地主)は誰か(登記簿で確認)
地主との関係
□ 地主の連絡先は、把握しているか
□ 地代は、期日どおり支払っているか(領収書・振込記録の保管)
□ 地主の代替わりや、底地の売却の話は出ていないか
建物の状態
□ 建物の老朽化は、どの程度か
□ 将来、建替えや大規模な修繕の予定はあるか
将来の計画
□ 売却・相続・底地の買取りなど、将来の方針はあるか
分からない項目が多い場合は、現状の整理から、専門家に相談することをおすすめします。
第10章 借地権トラブルの「想定ケース」
ここでは、よくあるご相談のパターンをもとにした想定ケースを紹介します。(以下は典型的な相談パターンをもとにした架空の例であり、実際の成約事例ではありません。)
想定ケース1:借地権付きの家を売りたいが、地主が承諾しない
状況 親から相続した、借地権付きの古い家。住む予定がないので売却したいが、地主に相談したところ、「承諾はしない」と言われてしまった。
進め方のイメージ
1.契約書で、借地の種類、譲渡に関する特約を確認する
2.不動産会社に査定を依頼し、借地権付き建物としての価格を把握する
3.地主が承諾しない理由(金額への不満、土地を取り戻したい、関係の悪化など)を丁寧に聞く
4.地主が、土地を取り戻したいのであれば、借地権を地主に買い取ってもらう、または、底地と借地権の同時売却を提案する
5.話し合いが進まない場合は、弁護士に相談し、**借地非訟(譲渡許可の申立て)**を検討する
ポイント 地主が承諾しない理由に応じて、解決策が変わります。地主の立場も考えた提案が、解決の糸口になることがあります。
想定ケース2:地主が代替わりして、地代の大幅な値上げを求められたケース
状況 長年、穏やかな関係だった地主が亡くなり、相続した子どもから、地代の大幅な増額を求められた。応じないと、契約を解除すると言われている。
進め方のイメージ
1.現在の地代の額と、固定資産税の推移、近隣の地代を確認する
2.自分が相当と考える額を、払い続ける(滞納しない)
3.新地主の要求の根拠を、書面で確認する
4.話し合いがまとまらない場合は、弁護士に相談し、地代増減額の調停を検討する
5.地代の受け取りを拒否された場合は、供託する
ポイント 地代の増額を求められても、直ちに解除されるわけではありません。冷静に、法的な手順を踏むことが大切です。
想定ケース3:建物の老朽化で建替えたいが、承諾料が高額で折り合わないケース
状況 築50年近い木造の建物が老朽化し、建替えたい。地主に相談したが、高額な承諾料を求められ、金額で折り合えない。
進め方のイメージ
1.契約書の、増改築・建替えに関する特約を確認する
2.承諾料の金額の根拠を、地主に確認する
3.一般的な承諾料の目安(更地価格の数%程度といわれる)や、不動産会社・専門家の意見を踏まえて、交渉する
4.折り合わない場合は、**借地非訟(増改築許可の申立て)**を検討し、裁判所に、適正な承諾料を判断してもらう
5.建替えではなく、借地権の売却や、底地の買取りも、選択肢として比較する
ポイント 承諾料の金額が折り合わないときは、借地非訟で、裁判所に適正額を判断してもらう道があります。また、建替え以外の出口も、同時に検討すると、選択肢が広がります。
第11章 誰に、どの順番で相談すればよいか
借地権の問題は、法律・不動産・税金が絡み合うため、専門家を使い分けることが大切です。
| 相談先 | 得意なこと | こんなときに |
|---|---|---|
| 不動産会社 | 査定、売却の進め方、地主との調整、底地・借地権の取引 | 借地権の価値を知りたい。売却・底地買取りの方法を整理したい |
| 弁護士 | 地主との交渉、借地非訟、調停・訴訟、契約の解釈 | 地主と対立している。立退きや解除を求められた。承諾を拒否されている |
| 司法書士 | 登記(建物の相続登記、所有権移転登記など) | 建物の名義変更、相続登記、借地権の登記 |
| 税理士 | 譲渡所得税、相続税、贈与税、承諾料・更新料の税務 | 売却・底地買取り・借地権の整理に伴う税金を知りたい |
| 土地家屋調査士 | 測量、境界の確定、分筆 | 境界が不明確、越境がある、土地の一部を分けたい |
| 不動産鑑定士 | 借地権・底地の適正な価格の評価、地代・承諾料の鑑定 | 価格や承諾料の妥当性を、客観的に評価したい |
公的な相談窓口
・法テラス(日本司法支援センター):法的なトラブルについて、情報提供や、弁護士・司法書士の紹介、経済的に余裕がない場合の費用の立替え制度などがあります(利用条件があります)
・弁護士会の法律相談:各地の弁護士会が、法律相談を実施しています
・自治体の無料相談:自治体によって、法律相談や不動産相談の窓口があります。実施の有無や日程は、お住まいの自治体の案内でご確認ください
・裁判所(借地非訟):借地非訟の手続きについて、裁判所のウェブサイトに、手続きの案内や書式が掲載されています
相談の順番の目安
1.まず、現状を整理する:契約書、登記簿、地代の領収書などを集める
2.不動産会社に相談し、借地権の価値と、選択肢を把握する
3.地主との関係が険悪、または法的な判断が必要なときは、早めに弁護士に相談する
4.税金が関わる場合は、税理士に確認する
第12章 当社(株式会社ピーエフ&パートナーズ)にご相談いただけること
株式会社ピーエフ&パートナーズは、世田谷区駒沢に拠点を置き、世田谷区・目黒区を中心に、不動産の買取・売却、相続した物件のご相談、賃貸管理、不動産に関するトラブルのご相談まで、幅広く対応しています。20年以上の業界経験と、不動産に関する法務に詳しい弁護士との連携を強みとしています。
当社がお力になれること
・借地権付き物件のご相談:借地権の状況を整理し、売却や活用など、考えられる選択肢をご説明します。
・不動産の査定・価値の把握:売却や交渉の判断材料として、客観的な目安をお伝えします。
・法的な課題への対応:地主との交渉、承諾、契約など、法的な判断が必要な場面では、提携の弁護士と連携して対応します。
・専門家のご案内:登記、税務、測量などが必要な場合は、状況に応じて、適切な専門家への相談をご案内します。
借地権の問題は、個別の契約や経緯によって、取るべき方法が大きく変わります。まずは、現状をお聞かせください。「売るかどうか決めていない」「契約書が見つからない」という段階でも、構いません。無理に売却をお勧めすることはありませんので、お気軽にご相談ください。
売却全般のポイントは、不動産売却で失敗しないためのコツや、あなたに合わせた売却方法のご紹介でも解説しています。
まとめ:借地権のトラブルは、「契約の確認」と「早めの相談」で解決の道が開く
借地権のトラブルを解決するための要点を、あらためて整理します。
1.まず、契約の種類と内容を確認する:旧法借地権、普通借地権、定期借地権で、ルールが大きく異なる。
2.地主の主張が、必ずしも法的に通るとは限らない:更新の拒絶には正当事由が必要。更新料は、法律上の当然の義務ではない。
3.承諾が得られないときは、借地非訟がある:譲渡、建替え、増改築などの承諾に代わる許可を、裁判所に求められる。
4.地代は、払い続ける:増額に不満があっても、相当額を払うか、拒否されたら供託する。
5.地主が変わっても、借地権は存続する:建物の登記と、相続登記を、整えておく。
6.出口を考える:借地権の売却、底地の買取り、同時売却、借地権の返還など、複数の選択肢を比較する。
7.やってはいけないことを避ける:無断の譲渡・増改築、地代の停止、安易なサイン、放置。
8.専門家を使い分ける:不動産会社、弁護士、司法書士、税理士、土地家屋調査士。
借地権のトラブルは、時間がたつほど、地主の代替わりや建物の老朽化により、複雑化しやすい問題です。最初の一歩は、現状の整理と、相談です。
「借地権付きの家を売りたい」「地主との話し合いが進まない」「契約書が見つからない」「相続した借地権をどうすればよいか分からない」という方は、お気軽にご連絡ください。
株式会社ピーエフ&パートナーズ
〒154-0012 東京都世田谷区駒沢2丁目6番2号 アイタワー4F(駒沢大学駅より徒歩2分)
電話:03-6805-5999
宅地建物取引業免許:東京都知事(3)第87902号
よくある質問(FAQ)
Q1. 借地権の契約更新で、更新料は必ず払わなければなりませんか? A. 更新料は、法律で定められた義務ではありません。契約書に更新料の定めがある場合や、これまでの慣行がある場合は、支払いを求められることがありますが、契約に定めがない場合に、当然に支払い義務が生じるわけではない、とされることが多いのが実情です。請求を受けたら、すぐに支払わず、契約書の内容を確認し、専門家に相談しましょう。
Q2. 地主が、契約の更新を拒否しています。借地権を失いますか? A. 旧法借地権や普通借地権では、地主が更新を拒絶するには、正当事由が必要です。地主の都合だけでは、認められないのが原則です。ただし、立退料の提供なども含めて総合的に判断されるため、弁護士に、見通しを確認してください。
Q3. 借地権付きの建物を、地主の承諾なしに売却できますか? A. 賃借権の借地権では、地主の承諾が必要です。承諾なしに売却すると、契約違反として解除の理由になりうるため、注意が必要です。地主が承諾しない場合は、裁判所の借地非訟の手続き(土地の賃借権の譲渡許可)を利用できる場合があります。
Q4. 譲渡承諾料の金額は、法律で決まっていますか? A. 法律で決まった金額はありません。一般に、借地権価格の10%程度といわれることがありますが、目安にすぎず、契約や地域、交渉によって異なります。地主が高額を求める場合は、借地非訟で、裁判所に適正額を判断してもらう方法があります。
Q5. 地主から、地代の値上げを求められました。応じる必要がありますか? A. 当事者は、地代が不相当になったときは、将来に向かって増額・減額を請求できます。ただし、根拠のない値上げに、直ちに応じる必要はありません。話し合いがまとまらない場合は、調停を経て、訴訟で決着します。その間は、自分が相当と考える額を、払い続けてください。
Q6. 親から借地権付きの家を相続しました。地主に承諾料を払う必要はありますか? A. 相続は、借地権の譲渡にはあたらないため、原則として、地主の承諾や承諾料(名義書換料)は不要です。ただし、契約書に、特別な定めがないかを確認してください。また、建物の相続登記は、早めに済ませましょう。
Q7. 地主が代わりました。新しい地主の言うことに、従う必要がありますか? A. 新しい地主は、元の地主の契約上の地位を引き継ぎます。したがって、契約内容を一方的に変えることはできません。まず、登記簿で、新しい地主が所有権移転登記を受けているかを確認してください。借地上の建物の登記が、借地人の名義になっていることも、大切です。
Q8. 借地権を売らずに、地主から底地を買い取ることはできますか? A. 地主が売却に応じれば、可能です。底地を買い取ると、土地・建物が、完全な所有権になります。価格は、交渉で決まるため、不動産会社や専門家に、価格の妥当性を相談しながら進めましょう。
Q9. 借地権の契約書を、なくしてしまいました。 A. 契約書がなくても、借地権が失われるわけではありません。地代の領収書、建物の登記簿、過去の更新時の書類などから、契約内容を整理できる場合があります。専門家に相談してください。
Q10. 借地非訟は、自分で申し立てられますか? 費用や期間はどのくらいですか? A. 自分で申し立てることも制度上は可能ですが、専門性が高いため、弁護士に依頼するのが一般的です。申立手数料や、郵便切手の予納が必要で、期間や弁護士費用は、事案によって大きく異なります。裁判所のウェブサイトで、手続きの案内や書式を確認できます。
Q11. まだ売却するか決めていませんが、相談だけでもできますか? A. もちろんです。「売る」「持ち続ける」「底地を買う」など、方針が決まっていない段階でも、現状の整理や選択肢の確認のために、ご相談いただけます。
免責事項
本記事は、一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、個別の法律・税務・登記に関する助言を行うものではありません。借地権に関する権利関係は、契約の内容や経緯によって大きく異なり、法律や制度は改正されることがあります。実際の手続きや判断にあたっては、必ず弁護士、税理士、司法書士などの専門家、または裁判所、国税庁、法務省などの公式情報をご確認ください。また、記事中の金額や割合は、説明のための仮定または一般的な目安であり、個別の結果を保証するものではありません。
参考情報(公的機関)
・東京地方裁判所民事第22部:借地非訟事件について
・国税庁:財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)/借地権割合
・国税庁:マイホームを売ったときの特例
・法務省:相続登記の申請義務化について
・日本司法支援センター(法テラス)